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レトロな雑記帳
昭和の日本映画レビュー中心のブログです。テレビ番組や本の思い出を書く時もあります。
江戸川乱歩「悪魔の紋章」より 死刑台の美女
江戸川乱歩の美女シリーズ第3作目(1978年4月8日放送・テレビ朝日・井上梅次監督)

物語。犯罪学者宗方博士(伊吹吾郎)の代理で明智小五郎(天知茂)が香港に出張している最中に、大富豪川手庄太郎(増田順司)の一家が殺人予告を受ける。三女の雪子(結城マミ)、次女の春子(三崎奈美)が相次いで殺害され、その体には三重渦状の指紋が残されていた。更に長女の民子(かたせ梨乃)と川手自身の身にも魔の手が伸び…

幼少期に見ていた「美しい女(ひと)」の印象と言うのは、いつまでも経っても色褪せないものです。
松原智恵子さんと言えば、私にとってはNHK大河ドラマ「国盗り物語」のお市の方。清楚にして可憐、儚くも美しく散っていった、戦国に咲いた一輪の花…。松原さんのお市は、本当に素晴らしかったです。子供心にも、世の中にはこんなに綺麗な人がいるものなのかと思いました。
その松原さんが本作の「美女」として登場しています。
冒頭では、いきなり天知茂先生扮する明智小五郎が、松原さん演じる宗方夫人・京子をひと目見ただけで惹かれてしまいます。
って、オイオイ、相手は人妻(一応)だぞ・・・とツッコミ入れたくなる場面ですが、あのバンビのように潤んだ松原さんの瞳で見つめられたら一発で魅入られてしまう明智の気持ちはよくわかります^^;
病弱、薄幸…まるで絵に描いたように哀しい風情。そんな役柄が見事にはまる女優さんは、やはり松原さんをおいてほかにいないです。
物語は、その宗方夫人の依頼で明智が香港に出掛けている最中に、恐るべき殺人計画が進行してしまいます。

ちなみに原作では、宗方夫人は最後にちょろっと出るだけだし、明智も終盤になってから漸く登場します。
ついでに言えば、川手庄太郎の異母妹・北園竜子(稲垣美穂子)も原作では終盤ちょっと出てきてすぐ殺されてしまうだけの可哀想な役回りですが、ドラマでは序盤から登場して財産争いに一役買っています。シリーズの1作目と2作目では、概ね原作通りにドラマ化されて来ましたが、3作目の本作では、物語そのものは原作ベースで進みながらも、部分的にはテレビ向けの見せ場を作るために幾つかを手を加えています。
まず、タイトルを聞いた時点で「ハテ(・_・?)原作に死刑台なんて出て来たかな?」と記憶があやふやになります。そうです、死刑台云々なんて話は原作にはありません。このシーンはエドガー・ポオの小説「陥穽と振り子」からの流用であると同時に、乱歩自身がその着想を借用した通俗長編「大暗室」の中のワンシーンをアレンジしたものでしょう。川手民子役のかたせ梨乃ばかりか、五十嵐めぐみの文代さんまで下着姿で死刑台にかけられてしまうと言う、文字通り出血?大サービスのシーンもあります。

それはともかく、本作では両親の復讐のため富豪一家が皆殺しの予告を受けると言う、「浴室の美女(魔術師)」と同じようなプロットで始まります。しかものっけから立て続けに二人がお約束どおり全裸で殺されてしまうのですが、当然、この役は脱ぎ要員のポルノ女優さん。中でも春子役の三崎奈美は、あまりにも舌ったらずな台詞回しの稚拙な演技に笑ってしまうのですが、そこは体を張った演技に免じて問わないことにしましょう。この二人の殺人と言い、後の死刑台シーンと言い、1作目2作目と比べてもエログロ度が増してきているところに特徴があります。
しかもこの間、我らが明智先生は出張中で不在と言う、やきもきさせられる展開です。
明智に代わってお馴染み波越警部(荒井注)とともに捜査に当たるのは、犯罪研究の大家・宗方博士。
ただイマイチ役立たずで、犯人の後手後手を踏んでしまいます。
やがて明智も帰国して捜査に加わりますが、宗方博士の巻き添えを食ってしまったかのように、犯人に出し抜かれます。名探偵が二人も揃っていて、どうしたことでしょう…って、それは勿論理由があるんですけどね。
しかし最後にはまんまと犯人を罠に嵌めて面目躍如。
お馴染み、明智の変装シーンもありますが、後にステレオタイプ化されたような「変装ベリベリ」とは違って、ごく自然なものになっています。
散る花の運命の如く哀しい犯人の最期はシリーズ屈指の名場面でしょう。

宗方博士を演じた伊吹吾郎は、明智先生と張り合うライバルとしての貫禄は十分。
当時まだ30そこそこだったとは思えません。この貫禄が認められたのか、後に角刈りの黄金仮面となって復活、三度明智と渡り合っています。
なお本作では、後にお馴染みとなる「A」(明智のA)のイニシャル入りの、オリジナル・ブレザーが初登場しています。

関連タグ: 天知茂 松原智恵子 伊吹吾郎 江戸川乱歩

テーマ:懐かしドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

この記事に対するコメント

松原さんの清楚な美貌が光る一本でしたね〜。
>バンビのように潤んだ松原さんの瞳
本当にそのとおり!^^

原作よりも話が派手になっていて死刑台が登場するというシリーズの中でも目立つ一本ですが、まだ初期の頃とあっていろんな意味で勢いを感じる作品ですね。
宗方博士の研究室?にはいるときの仕掛けなんかも大掛かりでああいうの見るとなんかこうわくわくしてしまいます。
【2009/11/09 13:39】 URL | くりかのこ #3ctEyMNo [ 編集]


くりかのこさん、こんばんは。コメントどうもありがとうございます。
> 原作よりも話が派手になっていて
そうなんですよね。原作は割と地味で淡々としている話なので映像的に見せ場がないし、何より美女を選定できないのが弱いです。その点で京子と北園竜子を前面に出していたのはうまいアレンジでした。
やはり初期作品の方が、見ていて味がありますね。
原作に忠実と言うこともありますが、おっしゃる通り、一作ごとにいろいろな工夫を重ねながら勢いが加速しているのを感じます。
【2009/11/09 21:01】 URL | hayamin #mQop/nM. [ 編集]


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